ブログ

お知らせ

2020年2月27日更新

「肋骨骨折と解剖」理学療法士 田代雄斗 先生のコラム

今回は肋骨骨折と解剖に関する話です。皆様身の回りで肋骨骨折の事例経験はありますでしょうか?体をひねることの多い野球やゴルフなどでは疲労骨折を起こすこともありますし、高齢者で骨粗鬆症の方では転倒やくしゃみなど肋骨に急激な負荷がかかったことにより骨折をすることがあります。肋骨周囲の解剖を再確認すると共に肋骨骨折の知識も深めていただけたらと思います。

 

まず肋骨についての解剖を確認します。肋骨にもいろいろ種類があって、第1番から第7番までを真肋、第8番から第10番までを仮肋、先が繋がっていない第11番・第12番を浮遊肋といいます。肋骨は後方では脊柱の椎骨・前方は胸骨に連結した関節をそれぞれ作り胸郭が出来上がっています。またそれぞれの肋骨の間には2層の肋間筋が存在しており、外側の外肋間筋は斜め上から前下に向かって、内側の内肋間筋はそれと直角に交わるように後ろ下から前上に向かって走行しています。肋間筋は呼吸に関わる働きをしており、外肋間筋が縮んで肋骨を上方に持ち上げ、内肋間筋が縮んで胸郭を狭めるそれぞれの働きによって呼吸を行っています。

 

肋骨周囲と合わせて肺の解剖についても確認していけたらと思います。肺は肋骨の下の胸膜に包まれております。ちなみに左右の肺に挟まれた場所が縦隔であり、ここには心臓があります。肺の表面は肺胸膜で覆われていて、肺胸膜と肺の間には胸膜腔という隙間がありここにはわずかな量の液体が貯まっています。それによって呼吸の際に肺がスムーズに広がったり、縮んだりします。肺の中には肺胞という小さな空気の袋が詰まっており、スポンジのようになっています。呼吸の運動にはおもに胸郭を動かす胸式呼吸と、横隔膜を動かす腹式呼吸がありますが、肋骨骨折に繋がってしまう可能性がある咳やクシャミのときには呼気に関する筋が活動して息を強く吐き出している時の現象になります。

 

次に肋骨の外側にある肩甲骨周囲についても確認していこうと思います。肩甲骨には様々な筋肉が付着しています。上部には僧帽筋、下部には広背筋、内部には菱形筋や肩甲挙筋、裏側には前鋸筋、外側には三角筋や棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋など非常に様々であります。少し余談ではありますが、僧帽筋は菱形を縦にしたような形でカトリックの修道僧の帽子に似た形なので僧帽筋と呼びます。

 

ここから肋骨の疲労骨折に関してですが、回旋の動きを多く行うようなスポーツ選手で疲労骨折が起こりやすいのには理由があります。それは外腹斜筋と前鋸筋の影響だと言われる説がありますが、肋骨前面において外腹斜筋と前鋸筋はそれぞれ噛み合うような構造になっています。そこで身体の回旋と上肢が伴うようなスポーツ動作を繰り返すことによって肋骨に対する牽引ストレスが繰り返されてしまうことによって疲労骨折につながることがあります。疲労骨折がおこった場合は肋骨のピンポイントに圧痛が起こりますが、骨折部には徐々に骨沈着が起こって少し分厚くなります。過去に肋骨骨折既往のある方は解剖実習のときに局所的な肋骨に肥厚があることを観察できるかもしれないですね。

 

最後に肋骨骨折に対する臨床介入に関してですが、現在は微弱超音波(LIPUS:Low Intensity Pulsed Ultra Sound)が推奨されています。従来の骨折治療は、骨折部の整復・固定を行った後、骨癒合に関しては自然治癒力に任せるのが通常で、積極的に骨癒合を促進させる方法はありませんでした。ところが骨折部に微弱な超音波を照射する事で骨の形成が促進されることがわかってきました。特に肋骨骨折では整復やプレート固定などは行わず保存療法となるため、治癒を促進するためにLIPUSを使うことが多くなっていることを知っていただけたらと思います。

【田代雄斗先生プロフィール】
愛知県豊橋市出身。
京都大学医学部人間健康科学科卒業
同学科にて理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。
〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開

【田代先生SNSや他の投稿のご紹介】
Twitter
https://twitter.com/hiluco_yuto
note
https://note.com/paraworks
Facebook
https://www.facebook.com/tashiro.yuto
NewsPicks
https://newspicks.com/user/706023/
LinkedIn
http://linkedin.com/in/yuto-tashiro-a754b9194