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2019年12月25日更新

「顎関節と解剖」理学療法士 田代雄斗先生のコラム


今回は”あご”の話をしたいと思います。みなさん顎関節症になったり、顎が外れてしまったりした経験はありますでしょうか?顎関節は他の関節とは少し異なる特殊な構造をしています。これを機に少し意識を向けていただけたらと思います。

顎関節は、頭蓋骨(側頭骨)の下顎窩と下顎骨の下顎頭とをつないでいる関節です。顎関節は耳の下あたりに位置します。下顎窩は上顎と一体となった頭蓋骨の顎関節部分であり、下顎骨がおさまるくぼみ状の形をしています。顎関節は、体にある関節の中でも複雑な関節の1つで、蝶板のように開閉できるだけでなく、前後左右にずらすこともできます。

また顎関節には関節円板と呼ばれる特殊な軟骨があります。関節円板は下顎窩と下顎頭の間に介在する円板状の血管のない強靭な線維性結合組織で、この円板によって頭蓋骨と下顎骨が互いにこすれ合わないようになっています。その円板の形態は、中央部が薄く、その周囲がドーナツ状に厚くなり、さらにその周囲が薄くなり周囲組織に移行しています。関節円板の矢状断面形態は、下顎窩の最も深い位置に相当する部分が厚く(後方肥厚部)、その前方が薄くなり(中央狭窄部)、さらにその前方が少し厚くなっています(前方肥厚部)。関節円板の前縁は外側翼突筋上頭とつながり、筋肉が収縮することにより関節円板が前方に移動します。

顎関節は左右の顎関節が一対となり下顎骨を支えていますが、この構造は他の関節とは違う特徴的なものです。下顎骨は一塊であることから、左右の顎関節は協働運動を行い、1つの顎関節が運動すると必ず他方の顎関節も何らかの運動を行うことになります。両側の下顎骨が同時に前方滑走すると、下顎は前に突き出ることになり、片側の下顎頭のみが前方滑走すると下顎は反対側の下顎頭を軸にして回転することになります。

歯を噛み込むときに収縮する筋肉は咬筋、側頭筋、内側翼突筋です。これらの筋肉は歯と顎関節との間に位置しており、顎関節を支点にして下顎を引き上げる働きをしています。歯、咀嚼筋、顎関節の関係はてこの原理にて説明できます。歯は作用点、咀嚼筋は力点、顎関節は支点に相当しますが、てこの種類としては第3種のてこに分類され作用点と支点の間に力点が存在します。第3種のてこにおいては、力点に加えた力よりも小さい力が作用点に伝えられます。下顎窩が受ける圧力が一定なものと仮定すると、前歯で噛み込む力は小さくなり、奥歯で噛み込む力は大きくなります。奥歯で噛み込む力が前歯より強くなる理由は、作用点と力点の距離が近いからです。

最後に顎関節症に関してですが、20歳代前半と40〜50歳の女性に多い病気だと言われています。まれに生まれつき顎関節に以上のある乳児もいるようです。顎関節症の症状としては、頭痛、咀嚼筋の圧痛、顎関節のクリック音、開口障害などがあります。痛みは関節の内部ではなく、関節の近くで起こっているように感じられることもあります。一般的に上下の前歯の間に人差し指・中指・薬指の指先を縦に3本そろえて無理なく口に入れることができますが、顎関節症があるとしばしば口を大きく開けることができず小さくしか開きません。顎関節症の中で最も多いタイプは顎関節内にある円板が正常な位置よりも前にずれるもので顎関節内障と言います。顎関節内障では口が閉じると円板が前方へずれてしまいますが、口が開きあごが前にずれると円板がずれて正常な位置に戻る場合がありますが、それを”復位する”と言います。

このように顎関節は複雑な構造をしていますが、解剖実習の際の注意深く観察することで構造の理解を深めることに繋がると思うのでこれを機に勉強してみてはいかがでしょうか。

【田代雄斗先生プロフィール】

愛知県豊橋市出身。
京都大学医学部人間健康科学科卒業 理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。
〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開

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