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2019年11月26日更新

「馬の解剖」理学療法士 田代雄斗 先生のコラム


今回は今までとはまた方向性を変えて馬の解剖の話をさせてもらえたらと思います。大学院で腰痛の研究として容量性抵抗性電位法(Capacitive and Resistive electric transfer:CRet)という原理の物理療法に着目して研究をしていましたが、大学院在籍中に馬用の機械が新たに日本に普及することになって偶然にも馬主さんから依頼をいただくことになりました。現在では関わり始めて約3年になりますが、その間に自分の専門である理学療法に加え独学で獣医学を学んで人と馬の解剖的な違いをいろいろ知ったので、今回はその紹介をしようと思います。

 

まず人も馬も大きな分類としては脊椎動物になりますので、基本的な構造に関しては似ている部分が多いです。人も馬も脊柱が存在して、肩甲骨を介して上肢が存在し、骨盤を介して下肢が存在しています。しかし部分的に違いがあるため、まずは脊柱から紹介していこうと思います。まず脊柱は人も馬も頚椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾椎というカテゴリーにわかれますが、個数に微妙な違いがあります。頚椎は人も馬も7個で同様なのですが、胸椎に関しては人では12個に対して馬では18個、腰椎に関しては人では5個に対して馬では6個と少々違いがあります。ちなみにキリンのような首の長い動物でも頚椎は7個と同様であることはとても興味深い点かと思います。

 

次に上肢側の特徴に関してですが、肩甲骨は人も馬も同様に存在しているものの馬には鎖骨がありません。一説としては人間では二足歩行によって上肢を大きく動かすようになりましたが、水平内外転を行うなど肩関節の自由度を増すために進化して鎖骨が存在するようになったと考えられています。馬では四足歩行で前後方向の動きが主であるため、鎖骨が生まれる必要がなかったのかもしれません。

 

肩甲骨から先の上肢を見ていくと人間と同様に上腕骨、前腕の橈骨・尺骨が存在していますが、そこから先の形状はかなり特徴的なものになります。馬では走行スピードをあげるためにストライドを伸ばす必要があったわけですが、いわゆるつま先立ちをすることでその役割を果たしています。馬では第1指・第5指が退化して第3指(中指)の先で立つことによって脚の長さを伸ばして走る際のストライドを伸ばしているわけですね。また第2指・第4指は第3指の付着するように存在はするものの機能は果たしていません。その脚の先には爪が進化した蹄が存在し、脚接地面の剛性を高めています。この蹄も馬特有のものでそのケアを生業にする装蹄師もいるほどなのでまたの機会で詳しく解説ができたらと思います。

 

次に下肢に関しては、骨盤から大腿骨、脛骨・腓骨と連続しますが、腓骨に関しては退化して下端にいくにしたがって細くなり、脛骨に付着して消失するような形となっています。そこから先は前肢と同様に第3趾でつま先立ちをするような形で、第1趾・第5趾は退化しています。後脚においては関節の名前が特徴的で人間の足首にあたる部分は飛節、第3中足骨と指骨との間の関節は丸みを帯びていることから球節と呼ばれます。

 

おおまかな骨格に関しては以上のような通りで、脊椎を中心に肩甲骨を介して前肢があり、骨盤を介して後肢が、そして頚椎を介して頭部が存在している形になります。前肢・後肢に関しては人間同様にX脚、O脚、反張膝のような特徴を呈することもあり今後馬を見る機会があれば注目して見てもらえると特徴を見つけられるかもしれません。今回は主に骨格の話でしたが、そこに付着する筋肉に類似している部分も多く人の解剖的知識を持っていると興味深い部分も多いです。また他の動物の特徴なども調べてみてもらえると面白いと思いますし、新たな発見もあることでしょう。

 

 

田代雄斗先生プロフィール

愛知県豊橋市出身。
京都大学医学部人間健康科学科にて理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。

〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開

 

 

馬全体像