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2019年8月8日更新

理学療法士 田代雄斗先生のコラム「肩こりと解剖」


今回は肩こりにまつわる解剖の話をしたいと思います。肩こりは腰痛と同様に非常に多くの人が経験する体の不調であり、平成22年に厚生労働省で全国的に行われた有訴者数の調査では、男性で2位、女性では1位になっているほどです。複雑な頸部・肩甲骨周囲・肩関節周囲の解剖を理解することでより効果的な介入に繋げていただけたらと思います。

まず肩こりは主観的な症状であるため、レントゲンやMRIなどによって診断がつかなくても症状を訴える方も多いかと思います。ただ、中には頚椎椎間板ヘルニアがあって腕に知覚麻痺や運動麻痺がある場合や、ヘルニアがなくても腕にしびれがある場合は胸郭出口症候群など、何らかの病態を有している場合もあるかと思います。よって個人的には腰痛と同様に特異的肩こり、非特異的肩こりというような分類も後にはされる可能性があると感じています。まずは肩こりにも関係の深い特異的な疾患の説明をしていこうと思います。

まずは頚椎椎間板ヘルニアに関してですが、頚椎は腰椎と同様に伸展方向へのカーブを通常有しているため椎間板の前方への圧迫力が加わることによって椎間板が後方の突出し、脊髄を圧迫することがあります。それによって腕に知覚麻痺や運動麻痺がおこる病態が頚椎の椎間板ヘルニアです。頸部の解剖をする際には腰部と同様に椎間板の状況を観察するとヘルニアがあったかどうかも推察できると思うので、よく見てもらえたらと思います。

次に特異的と非特異的の中間に位置するような病態として、胸郭出口症候群があります。上肢やその付け根の肩甲帯の運動や感覚を支配する腕神経叢(通常脊髄から出てくる第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経から形成される)と鎖骨下動脈は①前斜角筋と中斜角筋の間、②鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙、③小胸筋の肩甲骨烏口突起停止部の後方を走行しますが、それぞれの部位で締め付けられたり、圧迫されたりする可能性があります。その部位によって斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれますが、総称して胸郭出口症候群と言います。実際の臨床では各スペシャルテストを行っても詳細に判定することは困難を極めますが、解剖実習の際には頸部から出ている腕神経叢の様子や、それぞれの絞扼可能性の高い部位それぞれの部位を観察してよりイメージを深めていただけると良いと思います。

もう1つ今回は肩こりの起こりやすい姿勢として、上位交差症候群(Upper Crossed Syndrome)を紹介します。上位交差症候群は胸椎が屈曲して頭部が前方偏位するような姿勢によって、胸部前面及び肩甲骨上部あたりの筋が硬く、頸部前面及び肩甲骨間の筋が弱くクロスするように症状が現れる状態です。上位交差症候群このような姿勢によって肩こりや頭痛が起こることも多くあります。また頭部が前方偏位している状態は頸部の生理的伸展が失われて直線上になってしまうことからストレートネックとも言われます。解剖実習の際には頸部及び胸部前後面の様子、また頸部のアライメントを観察することによっても上位交差症候群の状態であるのかを推測することもできるのではないでしょうか。

今回は肩こりに関連した頸部及び胸部周辺の症状について確認しました。頚椎・胸椎・肩甲骨・鎖骨・上腕骨にまつわる関節の構造、及び筋の機能を理解することは肩こりの改善のみでなく肩関節疾患の介入に関しても重要になってくるので、また今後も解説をしていけたらと思います。

 

 

《田代雄斗先生プロフィール》
愛知県豊橋市出身。
京都大学医学部人間健康科学科にて理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。
〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開