今年2020年はついにオリンピック・パラリンピックが開催されますが、海外からたくさんの選手やスタッフ、観客などが日本に訪れることになります。コラムを読まれている人の中にもメディカルスタッフとして大会に関わる方もおられるかもしれませんし、そうでない方も自分の治療院などに海外の方が来られることもあるかもしれません。そのような際にも今回の運動学に関する名称を覚えておくと痛みが出る運動方向の確認をする際などに役立つかもしれないので、勉強してもらえたらと思います。
以前のコラムでは骨格の英語名称を確認したので、今回は各関節における運動方向の呼び方をまず確認していけたらと思います。基本的な運動方向の呼び方としては、屈曲 (Flexion)— 伸展(Extension)、内転(Adduction)— 外転(Abduction)、内旋(Internal Rotation)— 外旋(External Rotation)というような形になります。そして各関節の可動域をROMと呼ぶことがありますが、それはRange Of Motionの略語であります。この中では特に内転・外転の違いが覚えにくいので注意してもらえたらと思います。
これ以外の特殊な事例として、足関節における内がえし(Inversion)外がえし(Eversion)や、母指の運動として橈側外転(Radial Abduction)尺側内転(Ulnar Adduction)や掌側外転(Palmar Abduction)掌側内転(Palmar Adduction)、手関節の撓屈(Radial Deviation)、尺屈(Ulnar Deviation)、掌屈(Palmar Flexion)、背屈(Dorsiflexion)などがあります。他にも前腕の回内(Pronation)回外(Supination)、肩関節における水平屈曲or内転(Horizontal Flexion or Adduction)水平伸展 or 外転(Horizontal Extension or Abduction)、肩甲帯における挙上(Elevation)下制(Depression)などもあります。母指の運動においては前回のコラムでも紹介した橈骨(Radius)尺骨(Ulna)の名称を覚えると、あとは内転(Adduction)・外転(Abduction)の呼び方を組み合わせた形となっていますし、水平内外転においても面の呼び方として水平軸のHorizontalを覚えておけば組み合わせて覚えられるので、また以前のコラムも復習してみるとよいかもしれません。
運動方向に加えて関節の構造についても少し勉強していただけたらと思います。骨同士の形によって様々な関節構造がありますが、蝶板関節(Hinge or Ginglymoid joint)、螺旋関節(Spinal or Cochlear joint)、車軸関節(Pivot joint)、顆状関節(Condylar joint)、楕円関節(Elliptical joint)、鞍関節(Saddle joint)、球関節(Ball joint)、臼状関節(cotyloid joint)、平面関節(Plane joint)、半関節(Amphiarthrosis)などさまざま種類があります。それぞれの形状に該当する関節は複数あるのですべてをここで示すことはできませんが、解剖実習の機会にはこれらの関節の構造を直接見られるよい機会だと思うので参加した際にはぜひチェックしていただけると良いと思います。
最後に運動方向の名称に加えて今回は少し筋肉(Muscle)についても勉強していただけたらと思います。筋肉は骨につく起始と停止があり、収縮(Contraction)と弛緩(Relaxation)を繰り返すことで関節の運動がおこります。てこの作用(Leverage)には3種類があり、骨につく筋肉の位置によって力の発揮が異なりますがまたそれについてもいつか解説できたらと思います。今回は有名な筋肉の名称を最初に示しますが、上腕二頭筋(Biceps)、僧帽筋(Trapezius)、ハムストリングス(Hamstring Muscle)、大胸筋(Greater pectorals muscle)、三角筋(Deltoid)、広背筋(Latissimus dorsi muscle)、上腕三頭筋(Triceps)、脊柱起立筋(Erector spinae)、大腿四頭筋(Quadriceps muscle)、大臀筋(Gluteus maximus)などはまず知っておくと良いと思います。
今回のような人体にまつわる英語の基礎知識を覚えておくと、解剖実習に参加したのみならず、普段の臨床や、英語文献の調査にも役立つことがあると思うので参考にしてもらえたらと思います。
※運動方向や関節の名称には複数あるため今回示すのは一例となります。
【田代雄斗先生プロフィール】
愛知県豊橋市出身。
京都大学医学部人間健康科学科卒業
同学科にて理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。
〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開
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