今回は足にまつわる解剖学的知識を確認できたらと思います。足の形状としては足底面に3つのアーチが形成されていることが知られていますが、そのそれぞれを内側縦アーチ、外側縦アーチ、そして横アーチと言います。そのアーチの形状の異常として最も有名なものがタイトルにもある内側アーチがつぶれた状態である扁平足です。それ以外にも内側縦アーチが逆に高すぎる場合をハイアーチ、そして前足部の横アーチがつぶれた状態は開張足という言い方もされます。それらの足部の異常は外反母趾との関連や、運動連鎖による膝の障害なども問題視されることがあり足の形を正常に保つことは重要です。今回はそれらの足の構造に関わる解剖を確認していきたいと思います。
まず足は踵骨、距骨が後足部に存在して、足の中間部には内側・中間・外側楔状骨及び舟状骨、立方骨が存在しています。そして1〜5趾それぞれには中足骨が存在しており、そこから先には基節骨・中節骨(第1趾にはない)、末節骨が存在して足部を形成しています。ここで先程のアーチを確認していくと、内側縦アーチは踵骨、距骨、舟状骨、内側楔状骨、第1中足骨で形成され、外側縦アーチは踵骨、立方骨、第5中足骨でそれぞれ形成されています。横アーチに関しては厳密に言うと後足部レベル、楔状骨レベル、中足骨レベルそれぞれに存在するとも言われますが主なものは中足骨の遠位部分において形成されています。骨としては以上のような種類において足部を形づくっているわけですが、人間が機能的に歩く・走るなどの動作を行うために靭帯・筋肉に覆われているため次はそれらを確認してみたいと思います。
まず足底に広く存在するのが足底腱膜です。それぞれのアーチの下面全面にわたるように広がっており、歩く際など荷重がかかるときの衝撃干渉として大きな役割を担っています。実際の解剖の際はどの程度の硬さがあるのか、触りながら確認してもらえると良いと思います。また、足底腱膜の奥には数多くの外在筋や内在筋が存在していますが、今回はアーチの形成に関わるものを確認していけたらと思います。まずは扁平足にも大きく影響する内側縦アーチですが、外在筋としては前脛骨筋、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋などが関与しており、内在筋としては母趾外転筋、足底方形筋などが関与しています。一般的に12歳ごろまでに足部形状が固まると言われていますが、我々が小学生を対象に行った研究によると扁平足を持つ子供では、それ以外の足部形状(ノーマル or ハイアーチ)を持つ子供に比べて足趾を屈曲する筋力が低い傾向にありました。内側縦アーチの落ち込みには多くの足趾を屈曲する筋が関与すると考えられているため、子供のころから足趾を動かす運動をすることは扁平足の予防にも重要になるでしょう。実際の解剖を通してアーチの形成に関わる軟部組織を確認して理解を深めてもらえたらと思います。
足部のアーチは足底腱膜、底側踵舟靭帯、長足底靭帯で主に支えられているわけですが、機能的にはトラス機構とウィンドラス機構という2つが主に働きます。トラス機構は建築用語で三角形の組み合わせによって強度を作り上げる仕組みですが、足においてはアーチ構造によって体重を支える仕組みになっています。ウィンドラス機構に関しては、船のいかりを巻き上げる機構を指しますが、足底面をはしる外在筋が足趾伸展動作によって伸長され、アーチを引き上げる構造になっています。検体の保存状態によっては確認しづらい場合もありますが、解剖の際に部位を確認するのみでなく外力を加えることで新たな発見がある場合もあるので意識してもらえたらと思います。
田代雄斗先生プロフィール
愛知県豊橋市出身。京都大学医学部人間健康科学科にて理学療法士資格を取得し、同大学院にて主に腰痛・物理療法・障碍者の就労支援に関する研究を行う。
〈現在の活動〉
・ボート競技のトレーナー活動
今後障碍者ボート競技においては国際クライファイヤー資格取得予定
・競走馬のコンディショニング
下肢や腰部の障害予防や、レース後の疲労回復などを担当
・株式会社HILUCO 代表取締役
主に障碍者の就労支援を目的とした事業を展開