『 え!! 弁はこんなに薄いの?!』
ある意味、芸術とも云える身体各所。そして、特にこの静脈の弁の機能は形状もしくみも質も、とても繊細である。
実際、この弁はどれほど頑丈に出来ていて逆流を防ぐ壁になっているのだろう。ふと、単純な疑問が湧いた。
静脈の中でも【皮静脈の大伏在静脈】を開いて見せて頂くことに。
静脈のなかで最も長い大伏在静脈は、幅3mm程と長い為、見つけることは出来るのですが、静脈自身は血管壁(平滑筋)が薄くてピンセットで持つと潰れてしまう。表面はゼリーのようにプルっぷる。
今回は更に、たくさんの脂肪に埋もれていた。(いたるところにいる脂肪さんの恐ろしさを実感)私は、外壁を傷つけない様に、潰さないように脂肪をハサミで1個1個取り除くので一苦労(日が暮れてしまう・・)。とうとう先生の手が出ました。
素早く慣れた手つきでも慎重に慎重に取り出し開いた静脈。
先生が、静脈をメスで開き、中に残っていた血液をきれいに取り除いた。しかし、私には、顔を近づけても内膜が見えているのにそれのどこに弁があるのかはすぐに見つけられない。
先生は、内膜を先の細い棒でスーッと上から滑らせた。すると、先端がスポッとポケットに収まった。まるで温めた牛乳にできる膜のようなそれを、更に薄く薄くした内膜の一部だ。思わず驚きの声が出てしまう程の薄さ、それが実際に目にした静脈の弁なのでした。
「小さくてかわいいかも」
静脈には重力に負けずに血液が逆流しない様、一方方向に流れるための弁というポケットがついている。この弁が壊れてしまうと血液が逆流し下肢静脈瘤が発生するという。参考書で見ていた絵や写真とはちょっと違う。本当にポケットなのだ。
セラピストとして参加させていただいた今回の解剖実習、実際にリフレクソロジーで施術を行う下肢には大変興味があった。
リフレクソロジーは足底や下腿を刺激することで血液循環を良くし、リンパの流れもさらに活性化させるといわれている。この静脈を見れば、足先から心臓方向に向かって求心性に流しだす意味もわかるしその重要性もよく理解できる。
そしてまた、下腿が「第二の心臓」と呼ばれている意味。それは心臓から遠くもっとも重力を受けている下肢の静脈を下腿部の筋の収縮の力で血液を心臓に向かって下から上へ押し戻しているのだ。つまり心臓と同じでポンプの役割を筋肉がしてくれているからなのですね。そして、静脈が筋肉の間を走行しているのは、熱が欲しいので動脈に絡んで温かさももらっているのだ。「静脈凄すぎる!」「人間の体って凄すぎる!!」
リフレクソロジーは窮屈な靴に入った足や同じ姿勢(特に座った状態)でつかえていなかった足の働きを刺激するお手伝いをしています。足底の反射区への疑問や不思議は多くありますが、今までのイメージの中での下腿の施術が、下腿の皮膚や筋膜(fascial)を外し、筋を見て触ることでリアルを知ることが出来き、これからは解剖実習で実際に見た刺激ポイントとして狙えそうな気がします。リフレクソロジーの世界が広がっていることは確かです。
以下、先生に伺った移植のお話で、今回見せて頂いた大伏在静脈を裏返して使うバイパス手術を参考としてWikipediaから引用します。
冠動脈バイパス移植術 (英: coronary artery bypass grafting、CABG)虚血性心疾患は、心臓の筋肉(心筋)への酸素供給量が低下し、需要量を下回ることによって起こる。心筋への酸素供給量が低下する原因の一つに冠動脈の狭窄、閉塞による血流量の低下が挙げられる。冠動脈バイパス術は狭窄した冠動脈の遠位側に大動脈(または内胸動脈)から血管をつなぎ、狭窄部をバイパスすることで血流量の回復をはかる手術である。
大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)は皮静脈である。足背の足背静脈弓より血液を集め、下肢内面の皮下を走行し外陰部静脈、浅腸骨回旋静脈、浅腹壁静脈などが合流し、伏在裂孔を通り大腿静脈に合流する。