解剖実習では、「筋肉」ばかりが目立つ訳ではありません。「神経」も「血管」もたくさんの「内臓」にも驚きは隠されています。今回は「動脈」です。
何故か、解剖実習をすると「あらゆる部分」がとても興味深く惹かれます。その中でも、人間といえば「心臓」がよくクローズアップされます。もちろん心臓自体の各所の説明と機能を解剖の先生に説明を頂くと「心臓」の素晴らしさにとても驚きます。例えば、その心臓に出入りする血管の太さや機能や感触にも、驚きはあります。「こんなに太い」とか「静脈の逆流しないポケット(弁)」などもとても感嘆します。解剖実習の素晴らしさは「実際に触れる」というところです。実習ですから当たり前ではありますが、「もう十分だ」というまで触れますし、触ることで「忘れられないもの」となります。それがとても大事なことのひとつなのです。イメージではなく「現物」なのです。
血管のひとつ、体幹を下っていく「腹大動脈」の太さにもみんなは驚きます。しかし「腹大動脈」の健康の基準がどのくらいが正常でどのくらいだとどんな調子なのか、実感しませんが、解剖の先生が「これは破裂してもおかしくない」という太さの動脈を見たときには本当にドキドキしました。これはどんどん太くなった状態なのでしょうか、壁が薄かった状態でしょうか。直径は人差し指と中指で円を作ったくらいの丸さです。こんなに太いチューブの中に常に血液が通過しているなんて、どれだけ体内に血液が必要なのか実体験しているような気がします。ついついプニプニと触ってしまいました。
さて、実際には筋肉だけではなく、身体の「消化管」にもたくさんの十分な血液の量が動脈によって運ばれています。なぜならその「血液に栄養が含まれて、また運ばれることが必要」だからです。
まず、おなかの中には主とする動脈が3本存在します。
「腹大動脈(ふくだい)」が上から下りてきます。そこから「腹腔動脈(ふくくう)」「上腸管膜動脈(じょうちょうかんまく)」「下腸管膜動脈(かちょうかんまく)」と次々と分岐して各担当場所に配置されます。
肝臓、膵臓、脾臓や胃と腸のはじまりの方には「腹腔動脈」が主に血液を運んでいます。小腸のほとんどの部分と大腸の前側半分までは「上腸管動脈」が担当します。大腸の後ろ半分は「下腸管動脈」が担当です。また、「腹腔動脈」は肝臓、膵臓、脾臓へ血液の供給もしています。その血管の太めのものは見ることができますが、血液が抜かれているので今ひとつ分かりにくいかも。大腸では膨らみに合わせて、腸の袋の周囲から囲むように枝分かれして腸の中に入り込み毛細血管となっていきます。大腸自体が中身が透けて見えるくらい薄い状態だったのでその袋のまわりにあるものはみえますが、毛細血管くらいになりますと全くわかりません。「腹大動脈」はゴムっぽいですが、「腸」は紙風船のような感じがしました。
・・・・大腸と小腸との見分けはつきます(笑)。・・・太さが全く違う!
さて今年も今日で終わり、あっという間の1年でした。
講師 富士子ブログを見て下さっている皆様、本当にありがとうございました。
来年もまた「富士子節」で吠えていきたい所存です。
講師:木原 富士子
皆様、良いお年をお迎えください。
記事担当:講師 富士子
参考写真:ぜんぶわかる人体解剖図