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2015年11月14日更新

肺を視てみよう。

解剖実習で献体さんから「肺」を取り出すのに結構大変である。なぜなら、肺は胸郭内で浮いている状態にみえるが、実は周囲はその位置に保つ為(?)の細かい繊維が無数にあるから。だから、大きいチューブを切断した後もスルッと取り出せず、はがすようにゆっくり取り出すのです。初心者には難しいので、肺を傷つけることなく取り出すこの実習では解剖の先生にしていただくことが多のです。

その前に!
開胸する前にチェックしていくのが「表皮から肺へのアプローチ(距離感)」。それが終了してから肋骨部分の切断に入る。切断後に肋骨の裏の神経を確認してから肋骨を取り外す。この順番で、さぁ、スタートです。

その①、まず肋間から肺を覗いてみる。穴を開けて覗き込むのだ。胸郭内が密集している状態を考えると肋間からの距離も「目の前」もしくは「密着しているように見える」という感じ。「肋間筋も薄い」し「肺までの距離がこんなに近い」と鍼治療にもさらなる気が抜けません。そこで、「肋間神経」を見ました。肋骨にかくれるように沿った神経はとても細かったです。鍼施術やマッサージでの「肋間神経」へのアプローチですが、これからはこの部分を意識できます。実感です。

その②.頚部横の部分(肩甲骨と鎖骨の間に挟まれた肩上部)から「肺尖」までの距離を計る。僧帽筋の上部繊維の横から覗き込む。そこから肺をみると、膨らんだ風船が見える。「いやぁ、こんなに近いのですか!」と感嘆の声がでる。そうなのです。全員が「肺尖」部分を上からつんつんする。こちらも驚くほど、指先少しもぐらせた位で肺に届く。本当に知ってはいたが実感するってこのことをいうのだろう。

それが終了すると、開胸作業にはいる。専用のハサミで肋骨と胸骨を切っていく。それが終了すると、軽く蓋を開ける程度の角度で前胸裏側を覗く。肋骨裏の神経をみたら肋骨を外し、
肺を摘出。そして肺をよく観察します。
人体の右側にあるのが、「右肺」、左側にあるのが「左肺」。「右肺3分割になっており、「上葉」「中葉」「下葉」。「左肺」は「上葉」と「下葉」の2枚。「肺」の下部分は「横隔膜」に接している。「横隔膜」の形に合わせて凹みがあるし、「左肺」は左寄りになっている心臓の外壁に合わせたような凹みもある。
「肺」へ空気を送り込む「気管」。全くもって、「掃除機のジャバラホース」そのまんま。毎日お世話になっている掃除機を考えると初めてお目にかかった気がしません。触った感触も似ています。皆さん触ると驚きます。
「気管」は頚椎6番あたりから胸の中央をおりてくるホースです。その部分の長さは10cmは超えている位。胸椎4番あたりで左右に分岐し「気管支」になります。気管支は心臓がその部分にあるために左右均等に分岐しているのではなく分岐の角度も心臓をさけた方向をとっています。気管支の太さは、右の方が太くて短く、左は45度くらい曲がっていているし右の気管支より細い。長さも1~2cm長め。
「右肺」が約1200ml、「左肺」が約1000mlの容量。
肺の周囲。筋肉が筋膜に覆われているように「心臓」をいれている「縦隔」がある。「縦隔」は、胸の縦の仕切りで左右に挟んだ胸腔部分に「肺」は存在する。参考本のようになっている状態では見れないのは、献体さんがお薬につかっていたからでしょうか。今度聞いてみます。
では、「肺」の状態をみてみます。今回の献体さんの状況で肺の色は「クリア」に近い、つまりキレイ。喫煙が原因での「黒」の肺も以前拝見しました。持っている参考本では、「生きている人間の肺の色」は「淡紅色」と記載されています。写真や模型で、肺の血管を人工で赤く色づけされたものを見ましたが「肺全体像は、まっかっか」です。毛細血管で形成されているんだってはっきり分かりました。でも、献体さんは血液が抜かれているので「クリア」にみえます。実際は血管の流れを考慮するとやはり「淡紅色」ということなのですね。この「肺」の部分で見たかったのは、肺の表面は薄い「2枚の胸膜」。この「胸膜」は「肺門」の部分で折り返されており、これによりうっすい「胸膜」が実は1枚ではなく「二重構造」となっている。見た目では、ぴたっとしているのでわかりにくい。この胸膜は、呼吸活動によっての摩擦を減らすことと胸膜腔内を「陰圧」にすることで「肺は、しぼまない」そうです。
「肺」の手触りは「スポンジ」そのものです。握って軽くつぶすとスポンジの空気が抜けるような感触です。

人間の身体をみていくと、感じることがたくさんあります。
その中のひとつが「身体を大切にしよう」と思う心がでてきます。状態の悪い箇所を見ても思いますが、心臓をみても、膝の構造をみてもそう思います。

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記事担当:講師 富士子
参考写真: