皆さんは、「どのくらい息が吸えますか。息を吸うとキツイ感じがしませんか。・・・ゆっくり深呼吸するとむせたりしませんか。」
運動をされている方にとっては、対象外の不思議な疑問です。運動をされていない方だって、「必要最小限」の呼吸で不自由もない。だから、普段「困ってもいない」。
だから、人間にとって当たり前になっている「呼吸」がどんなに大切なのかわかっていても実感するのは難しい。普段の生活レベルの筋力か、少しでも運動して余裕のある筋力なのかの差は意外と大きい。
例えば、呼吸も神社、仏閣までの急階段を筋力・呼吸が乱れすぎることなく到着できるでしょうか。それが、30代、40代、50代、60代、70代と身体が変化するのに負けずに完璧でしょうか。
解剖実習で見た「肺」。喫煙の方の肺は「黒い」。していない方の肺は「クリアな透明」。そこから吐き出させる空気の質も違う。機械が油まみれなのか、磨かれているのかの違いだろうか。
そこで、この「呼吸」に対して医療人としては何かできることはあるのだろうか。
さて、支障があれば実感する・・のでは遅いかな。私は、過去に「喫煙してマラソンした」時の体験の中で「呼吸って大事だな」と感じた。でもどう伝える・・・。
まず毎回出来ること。施術の最後に「前胸」をしっかり開いてあげることで息を吸い、その後に肩をストンと落としたような気持ち良い脱力感を感じとってもらおうか。「マッサージはもう終わりか」と思う残念感と「気持ちよかったな」という満足感。その中に「穏やかで軽い心地よい呼吸」は隠れて存在しているのだ。まずは、副交感で満ち足りた気持ち良さを笑顔で感じることから始めたい。
座位。施術終了時の「胸郭に対しての肩先の位置」はどうでしょうか。通常、前面での作業によって大きい差がでる。施術後なのに改善されていない時に「さてどうしよう」と考えよう。世の中には数ある勉強会に参加してそのちょっとしたコツを諸先輩方に聞くのが一番早いのかもしれない。
この時期に「マラソン」や「駅伝」のニュースを耳にする。
何年にも渡る継続的なトレーニングの結果である。「肺」「筋肉」はもちろん鍛え抜かれている。完璧なコンディションを目標とする日にもっていくのに長期計算はされている。
最後にものをいうのが「疲労」と「過緊張」かなと思う。そのコントロールは難しい。ニュースの解説者から「この選手はメンタルを鍛えてきた」という情報も耳にした。
「過緊張」は「イレギュラー」な事態をまねきやすい。どんなスポーツも普段の力を発揮すればいいだけなのに、それを阻む怖さをもっている。「過緊張」は吸っているはずの空気が必要な量を吸えていない状況をおこす。それは脳にも筋肉に不足分として影響する。
スイミングを教えていた時の呼吸のコツを1つ紹介します。
水泳にも「空気が吸えていない状況」はあるのです。
水上に顔を出したときに口をあけるが吸えていない。そうなると結局呼吸が乱れて苦しくなる。さて、そんな時のアドバイスは「吸って吸って!」では決してない。「(息を水中で)吐いて吐いて(吐き切って)!」なのだ。息を吐ききると自然と吸えるのだ。緊張は体幹を硬くする。胸郭も広がらない硬さを生む。だから、吸えない。
身体の力を抜いて欲しい時。「一回、体中に力を思いっきりいれてみて!」・・・その後に力が抜ける。ストレッチだって、緊張のあとに緩みがでる。
一般人だってスポーツ選手だって同じ。筋肉の動きは緊張しっぱなしではいけないね。緩んでこそパフォーマンスも向上する。
そういえば、体操の内村航平選手は「緊張しない」という。昔々、そんなインタビューを聞いた時、「このように成長を見守ってきた周囲の指導者もすごい」って感じました。緊張する中でもその緊張をパワーにかえて試合を楽しめるって凄い理想です。
オンとオフ。
切り替えも自分だけではなかなか不可能なものである。私はその部分も自分たちの「出来る」仕事の1つだと考えています。「言葉」でもいい「手技」でもいい。アロマオイルマッサージで直接肋骨を広げてあげるのもいい。「副交感神経」をうまく使いましょう。
記事担当:講師 富士子
参考写真:国立循環器病研究センターより