ある男性が「なんで腋窩神経は下で三角筋は上。なぜ、三角筋は腋窩神経なんだろう」???・・・「あぁこの柔整の若者を解剖実習に強制連行したい・・・」
でも、学生の時は私も同じだったかもしれないな。
絡まった糸をほぐす経験はきっと皆にもあると思う。解剖実習ではつながっている途中の神経をもときほぐす。ときほぐすというか絡まっているものを取り除き、わずかに違う太さの神経はどれがどれなのか明確にする作業。すぐさま明確に判別できると思いきや、絡み合う細かい神経の吻合が・・・・うう・・。(神経に名前が書いてあるとかさ~)それぞれに必要かと思えば走行プチプチ切れない。くそ~(失言)そこにまとわりつく細かい脂肪の粒とどろっとした脂肪の油と体液などなどをよけながらの作業は(全身においても一緒だが)器用な方だと思っていた私でも時間との闘いの中では思うように手が動かない。昔のルービックキューブをこねまわす動きを何度もする。最後には「先生~(泣)」。・・・ダメダメである。
「腕神経叢」は基本C5~Th1までの神経線維を指す。
別に頸神経叢とのきっかり区分けでもない。「横隔神経」もC3,4,5からの合流だ。参考本によっての支配神経の記述のわずかな違いもあるが、そこに(カッコ)しているものはやはり(カッコ)なのだ。ないわけではない状況が(カッコ)なんだな。頸神経叢と絡みがない訳ではないということだ。
解剖実習では、絡んだ神経をほぐしながら吻合の特徴をパズルのピースを見つけるように「これは何だ!」と見極める。(解剖の先生頼り♡)しかし、神経というものは筋肉の線維の中間から頭を出したり筋肉の横をすり抜けたりする。個人差も多少ある。見た感じ想像以上の枝分かれに吻合に絡み合い。いっぱいいっぱいでございます。これだけ多いとクモの巣のあの整然とした配列に拍手したくなる。
今日は「腕神経叢」。なぜか全てが有名。
「知覚神経」の領域は上肢が伸びに伸びて機能的になると同時に感覚の支配が複雑になった結果だ。しかし、「手の指の感覚がおかしいな」という時に「ここはC6の知覚神経の部分」という事実はおおもとを特定する材料のひとつになるのです。施術者は上肢の感覚自体が変だとするならば、原因箇所の特定と原因のラインを見つけたい。手先のしびれ感や上肢の違和感をもとに頸椎部分なのか斜角筋に挟まれた部分か肩か、はたまた手首かもしれないと原因の可能性を消去していきながらたどるのです。
「知覚神経」
C5上腕外側
C6前腕外側と第1・2・3指橈側(母指・示指・中指の親指側)
C7第3指(中指)
C8第4・5指(環指・小指)と前腕内側
Th1上腕内側
では、しつこく実況解説いってみよう!
腕神経叢はC5~Th1からなっている。神経は椎体を出てすぐ前斜角筋と中斜角筋の間を通り抜ける。通り抜けるとすぐにC5とC6の神経根は合流し「上神経幹(upper trunk)
」になり、C7はそのまま「中神経幹(middle trunk)」、C8とTh1は合流して「下神経幹(lower trunk)」を作る。(ここまではおばさんの頭でも簡単なんだよね↴)
鎖骨下でそれぞれ各神経幹が2つに分岐する。
「上神経幹(C5、C6)」と「下神経幹(C8、Th1)」の分岐した1本ずつが「中神経幹(C7)」に合流する。ここで3本がひとつになった。この3本束になったラインを「後側神経束」と言う。posterior cord(コードってかっこいいね)。
これは「腋窩動脈」との位置関係で「後側神経束」「内側神経束」「外側神経束」という名称。「幹」からでた「束」なのだ。(この部分を探すのは図では簡単明快でも実際の実習では私にとってはビミョ~におみくじ状態(今度頑張って見つけます))
「後側ライン」、「内側ライン」、「外側ライン」とイメージしておこう。
「外側神経束」
「中神経幹」(C7)は3本合流の前に実は分岐している。その分岐した束は「上神経幹」(C5,C6)と合流。これが「外側神経束」(C5、C6、C7)。
ジャンクションで違う路線に移った神経があるとイメージしよう。(車で東京から首都高で分岐点で間違えないで頑張って横浜行く感じ)
この「外側ライン」すぐに「外側胸神経」(大胸筋・小胸筋)そして最終的に「筋皮神経」(烏口腕筋・上腕二頭筋・上腕筋)に行く前になっなんと「正中神経」にも分岐している。
つまり最終的に「外側ライン」は「筋皮」と「正中」に行く。
「後側神経束」。
「後側神経束」は3本が束になった後、「腋窩動脈」の横(?)辺りで枝分かれ「上肩甲下神経」。本線はまた枝分かれ「胸背神経」(広背筋)。で本線からまた「下肩甲下神経」に枝を出す。・・・(「肩甲下筋」と「大円筋」にいくはずの神経は「上肩甲下神経」「下肩甲下神経」どっちがどっちにいくのだろう)
これはそのまま「腋窩神経」(三角筋、小円筋)と「橈骨神経」(上腕三頭筋、腕橈骨筋、肘筋、伸筋)つまり上腕の後面にまわって親指側も含めて手の背面方向にいく。「橈骨神経」は上肢の中で一番領域がある。それは上肢の全ての「伸筋」に運動繊維を分布しているからだ。
「内側神経束」
さて、最後のひとつ。C8、Th1が合流して「下神経幹」。その後に分岐、1つはC7と合流(3本合流のヤツ)に行ってしまった。で残りのもう1つは「下神経幹」となり「内側神経束」となる。そこから「内側胸神経」(大胸筋・小胸筋)に枝をだす。その後「内側上腕皮神経」「内側前腕皮神経」に枝をだす。
これは結局「正中神経」(円回内筋・長掌筋)「尺骨神経」(尺側手根屈筋・母指内転筋)行きなのだ。それはてのひら側から小指方向の領域である。
末梢神経といわれる5本線。
「筋皮神経」「腋窩神経」「橈骨神経」「正中神経」「尺骨神経」
「外側神経束」から「筋皮神経」
「外側神経束」と「内側神経束」が一緒になり「正中神経」
「内側神経束」の残りが「尺骨神経」
「後側神経束」が「腋窩神経」「橈骨神経」
東京の鉄道ラインを理解していない私が、この説明を文章化するのはいささか事故寸前の危険性がある。「図」をみれば一目瞭然・・・・。
あぁ脳みそ絡まった。疲れたのでカフェイン注入にいってきます↗。
記事担当:講師 富士子
(写真:富士子 力作!)