「肺は第1肋骨に付いている」という解剖に精通した先生のセミナーを受けた方から、飛んで飛んで間接的ですが私の解釈はどうなんだと事務長から回ってきました(笑)
ご質問に対して 私的に考察をしていきます。
結果を先に述べますが、私は「付着はしていない」と考えます。二層の胸膜もありますし、まだ付着した状態を私は見たことはありません。解剖の先生達も数少ない珍しい事もあるらしいので、全くないとは断言できないのかもしれません。靱帯のように付着しているものなら「付着」と言える。でも無いはずです。しかし、病気で癒着もあるかもしれないし、レントゲン所見では角度によっては付いて見えるかもしれません。肺の周囲には二層の胸膜もあり圧によって大きく形状を変化させて働く。皆さんはいかがお考えでしょうか。
お伝えするもう1点。私も苦労している点です。言葉のチョイス次第で複数人数それぞれ「受けての解釈」は違うかもしれない可能性です。「付いている」= 「付着」ととるのか「密着して見える」それは「接点」の状況ですが、「発生している」「触れている」、
・・・どういう視点でセミナーがあったのか分かりませんが、今言えることはこのぐらいかもしれません。
ここで解剖実習での肺の状態をまずお知らせしましょう。
ホルマリンに浸かった献体の体内は、大量のホルマリンでいっぱいです。だから勿論肺の中にもホルマリンは入っています。これは本来は空気が入っている部分ですね。
次は私から見た質感と形態。見た目は目の粗いスポンジです。目が粗いという表現は、よく売られているスポンジは目が細かいのでそれより大きいという意味です。肺胞の一つひとつが透明な泡のように見えます。ちなみにキレイな肺だったので透明です。(タバコを召されている方の肺は炭色の黒の肺胞)。
透明なその泡の中にはホルマリンの液体が入っているのが顕微鏡を使わなくても私の目に見えます。肺を手で縮めるとシュワシュワと細かく液体が浸みだしてきます。透明泡から出た、目が細かいシュワシュワです。それは食器用のスポンジとは全く違った弾力感です。泡の方が目が細かいのか、液体自体を簡単には通さずゆっくり絞り出すような潰れ方をしました(表現は難しい)。遊んではいませんが、何度も試させていただきました。透明で弱そうです。でも繊細なものだと感じました。
肺全体は薄い膜に包まれています。右が「上葉・中葉・下葉」左が「上葉・下葉」。肺は体内では大きく膨らんでいますが体外に出すとしぼむそうです。だからホルマリンの液体に浸かった状態より実際はもっと大きく膨らんで働くということです。
ここで一つ、知っておいてもいいなという「胸膜肥厚」についてお知らせします。
これは、私の言葉ではなく、勉強させていただいている「All about」さんの掲載を転記させていただきます。 touch.allabout.co.jp
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『 胸膜肥厚(きょうまくひこう) 』とは?
健康診断でレントゲン写真を撮影した場合、明らかに病気が疑われる場合には「要精査(精密検査)」、医師の側でも判断に迷うときや、時間を空けてもう一度検査をしたほうが良いという場合には「経過観察」といった言葉を用います。そんな中で、異常を指摘された患者さんから「胸膜肥厚とは何ですか?」という質問を時々いただくことがあります。
胸膜肥厚という判定は珍しいことではありません。胸膜とは肺を覆っている膜のことを指しますが、例えば炎症を起こして治癒すると、胸膜が厚みを帯びることがあります。言うなれば傷跡のようなものですが、これを胸膜肥厚と呼びます。肺の天辺(てっぺん)の部分は「肺尖部(はいせんぶ)」と呼ばれ、胸膜肥厚の見つかることが多い部分です。このとき、肥厚が高度な場合には肺結核や胸膜腫瘍を疑う所見の1つとなります。
しかし、こうした病気でもないのにいわゆる「所見」として胸膜肥厚を指摘されることがあります。このように病的ではない胸膜肥厚を「Apical cap(肺の尖端の帽子と訳すとニュアンスが伝わるでしょうか?)」 と表現することもあります。
年齢別には、一般的には20代~40代ぐらいの若年者であれば胸膜肥厚があったとしても病的なものではないことが多いのですが、50代以降で胸膜肥厚を指摘されたときに注意したいのは肺結核やアスベストによる胸膜中皮腫の危険性です。
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鍼の世界では、「気胸」に気を付けて施術します。
そんな時に肺の位置関係を掴むことは最低限の勉学です。解剖実習では毎回皆さんの関心事となっています。All aboutさんからお借りした記事はこういうこともあるということを知り、いつも以上に細心の注意を払う必要性を感じていただけたらと思います。
尚、この件は5月の解剖実習でも注目点となっています。
この話をもってきた事務長と代わります。(富士子)
今回は、鍼灸師でご自身で院を経営されているドナベさん(仮名)からのご質問にお答えいたしました。―編集長でもある小池より(同一人物か?w)
記事担当:講師 富士子
(参考写真:全部わかる靭帯解剖図)