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お知らせ

2014年11月10日更新

献体してくださったカレンさん(仮名)についてシェアしなくてはいけませんね。

今回、献体として自らの体を「研究のために」と、捧げてくれた方の紹介をします。

最初に参加者全員で黙祷し祈りを捧げます。それから実習をスタートです。
その時に先生より献体の方の情報を紹介されます。

ご芳名:カレンさん(仮名)
年齢 :64歳
持病 :高血圧、ハンチントン舞踏病(こちらも珍しい病気です。こちらについては後述します。)死因もわからない?
今回はこの情報しかなかったのですが、この情報と解剖を進めていく中で、仮説を立てられることも沢山あります。
憶測の身長:160cm
憶測の体重:70kg
観察特徴:体幹がビア樽状、手足がとても細い

◆筋肉、骨格からの情報
まず注目したのは、彼女の足の細さです。初日、献体はうつ伏せになっています。上半身がかなりふくよかな彼女からは想像も出来ない足の細さで、ふくらはぎに関しては、500mlペットボトルの太さ。大腿部は2㍑ペットボトル位。体幹の大きさを考えると支えとして弱すぎる気もします。足からの情報だけでも、想像は膨らみます。

舞踏病の発症はいつなのか。足の太さからみると、車いす生活はしていたのか。車いす生活だとすれば体重増加はその後か前か。それとも寝たきりで運動がないからか。ストレスで食べた。薬の影響で太りやすい状況だったのか。病気での不随意運動で足を怪我して歩行困難になったとか・・。(そしてどんどん食べちゃった?!)

ここで解剖時発見事実材料が一つ。そこでまた、想像の域が広がったのだ。「右膝前十字靭帯消失」。きれいに瘢痕縮小 跡形もない。半月板の損傷具合をみたら、歩行は絶対困難だと判断出来るほどギザギザで変形。右膝の手術痕なし。左膝は正常。(後日アップしますが、Drawer,s Testもしました)左右の下肢の角度は亡くなった後の状態か。

病気の発症が30~40代が多いとはいえ、当てはまらないこともあるし。しかし、僧帽筋を始め背筋の小ささと薄さは、使用していない生活だったか。筋肉相手の仕事をしているので興味深々な状況。例えば動脈血が全て抜いてあるということは、筋肉の血管も縮小してあの大きさになったとか。もしかしたら筋力低下は一ヶ月でも顕著にでるし。それから、ベッドでの寝たきり生活はあったのか。

◆各内臓からの情報
例えば「肺はとてもきれい」「肝臓もきれい」
「心臓がちょっと大きい」高血圧と記載があったな・・・
「腫瘍を発見」・・・神経、血管に絡んでいたけど・・・
「副腎がない」・・・???
「腸が大きいけどどうしてかな・・・」
(上行結腸、横行結腸、下行結腸に関して、数年間で7献体は見てきたが、一番大きくて太かった。)
「子宮がない」・・・子宮全摘?腹部の左右に走る大きい手術痕はそのせいか、帝王切開?
などなど仮説を立てると事が出来るのも、解剖実習ならではの体験と学びである。

そして、実習が全て終了したあとにも、参加者全員で感謝の黙祷をして終わります。
実習報告はまだまだ続きますが、今回はあえてカレンさんの事を書かせて頂きました。
参加をお考えの皆様が、毎回記事に興味を持ってくれるこの時期に、献体を捧げて下さったカレンさんに対し、改めて感謝をしたいのです。
毎回そうなのですが、献体して下さる方が居て、この貴重な研究が出来るという事を皆様と共有したかったからです。
この記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。

合掌

【補足】
※ハンチントン舞踏病 ウィキペディアより引用
ハンチントン病(はんちんとんびょう、英: Huntington’s disease)は、大脳中心部にある線条体尾状核の神経細胞が変性・脱落することにより進行性の不随意運動(舞踏様運動、chorea(ギリシャ語で踊りの意))、認識力低下、情動障害等の症状が現れる常染色体優性遺伝病。日本では特定疾患に認定された指定難病である。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E7%97%85)

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